貨物自動車(トラック)の事故報告について
一般貨物自動車運送事業者は、使用する自動車について重大な事故があった場合には、事故があった日から30日以内に運輸支局に事故報告書を提出しなければなりません。
事故報告書を出さなければならないのは重大事故を起こした時
事故報告書を出さなければならない重大事故とは、次のような事故です。
事故種類 | 事故の状況 |
---|---|
転覆 | 当該自動車が道路上において路面と35度以上傾斜したとき |
転落 | 当該自動車が道路外に転落した場合で、その落差が0.5m以上のとき |
路外逸脱 | 当該自動車の車輪が道路(車道と歩道の区分がある場合は、車道)外に逸脱した場合で、「転落」以外のとき |
火災 | 当該自動車又は積載物品に火災が生じたとき |
踏切 | 当該自動車が踏切において、鉄道車両[軌道車両を含む)と衝突し、又は接触したとき |
衝突 | 当該自動車が鉄道車両(軌道車両を含む)、トローリーバス、自動車、原動機付自転車、荷牛馬車、家屋その他物件に衝突し、又は接触したとき |
死傷 | 死者又は重傷者(※)を生じたとき |
危険物等 | 自動車に積載された危険物、火薬類、高圧ガス、核燃料物質等を全部若しくは一部が飛散し、又は漏洩したもの |
車内 | 操縦装置又は乗降口の扉を開閉する装置の不適切な操作により、旅客(乗降する際の旅客を含む。)を死傷させたとき ※旅客の傷害:11日以上の医師の治療を要する障害を受けたもの |
飲酒等 | 酒気帯び運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転又は麻薬等運転にあたる行為を伴うもの |
健康起因 | 運転者の疾病により、事業用自動車の運転を継続できなくなったもの |
救護違反 | 救護義務違反があったもの |
車両故障 | 自動車の装置の故障により、自動車が運行できなくなったもの |
交通障害 | 橋脚、架線その他鉄道施設を損傷し、3時間以上本線において鉄道車両の運転を休止させたもの。又は、高速自動車国道又は自動車専用道路において、3時間以上自動車の通行を禁止させたもの |
その他 | 10人以上の負傷者を生じたもの 10台以上の自動車の衝突又は接触を生じたもの 自動車に積載されたコンテナが落下したもの 車輪の脱落、披けん引自動車の分離を生じたもの(故障によるものに限る) |
重傷者とは
- 重傷者とは、次の傷害を受けた者を言います(自動車損害賠償保障法施行令第5条第2号)
イ 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの
ロ 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
ハ 大腿又は下腿の骨折
ニ 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
ホ 14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの - 次の傷害(前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者(同施行令第5条第3号)
イ 脊柱の骨折
ロ 上腕又は前腕の骨折
ハ 内臓の破裂
ニ 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
ホ 14日以上病院に入院することを要する傷害
自動車事故報告書の書き方
事故の種類
(1)区分
(ア)2種類以上の事故を併発した場合は、最も大きな被害を発生した事故の種類を当該事故の種類とします。
酒気帯び運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転若しくは麻薬等運転を伴う事故又は救護義務違反があった事故については、区分欄に、転覆等の最も大きな被害を発生した事故の種類を記載するとともに、「飲酒等」又は「救護違反」の区分欄にも記載します。
(イ)自動車又は原動機付自転車と衝突又は接触して当該車両に乗っている者を死傷させた場合は「衝突」とし、自転車に乗っている者を死傷させた場合は「死傷」とします。
(ウ)走行中の車両への飛び乗り又は飛び降り等によって死傷した場合は「死傷」とします。
乗務員の不注意(扉の開口走行等)によって乗客等が当該車両より転落して死傷した場合は、「車内」とします。
(エ)家屋その他の物件と衝突して付近にいた人を死傷させた場合は「衝突」とします。
(2)衝突等の状態欄
「正面衝突」:自動車が相手方と対面して接近し、衝突又は接触した場合。
「側面衝突」:自動車が相手方と対面方向又は同方向以外の方向に進行(一方が停止している場合を含みます。以下同じ。)して衝突又は接触した場合。
「追突」:自動車が相手方と同方向に進行していて衝突又は接触した場合で次の「接触」以外の場合。
「接触」:自動車が相手方と並進中又は後続車が先行者を追い抜き、もしくは並進しようとして接触した場合。
「物件衝突」:自動車が家屋、その他の物と衝突した場合。
当該自動車の概要
(1)「車名」、「型式」、「車体の形状」及び「初度登録年又は初度検査年」は、けん引車が被けん引車を連結した状態で事故を引き起こした場合には、それぞれの車両について記載します。
(2)「有償貸渡し(レンタカー)」は、道路運送法第80条でいう有償貸渡しの許可を受けた自家用自動車です。
(3)「有償旅客運送」は、道路運送法第79条の規定により受けた登録に係る自家用有償旅客運送自動車です。
(4)「積載危険物等の品名」は、「自動車事故報告規則 別記様式(注)(10)各号」のそれぞれの法令に定められた名称とします。
道路等の状況
「警戒標識」は、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令第1条第2号に定める「案内標識、警戒標識、規制標識及び指示標識」をいいます。
これらの標識が設置されていて、警戒標識によって運転上注意の必要があると認められる箇所において事故が発生した場合に「有」とし、それ以外の場合は「無」とします。
損害の程度
「損害の程度」は、当該事故があったときの医師の診断結果に基づき記入することが原則です。
死亡については、当該事故の発生後24時間以内に死亡したものとします。
当時の状況
(1)当該自動車の事故時の走行等の態様欄
(ア)「追越」は、自動車が進路を変え前車の側方を通過してその前方にでるまでとします。
(イ)「左(右)折」は、直進の状態からハンドルを左(右)に切り、さらに直進の状態に戻るまでとします。
(ウ)「その他」は、蛇行、割り込み等とします。
(2)事故発生地点欄
(ア)事故発生地点の区分は、当該事故が発生したときに、当該自動車の大部分が位置していた場所によります。
(イ)交差点、バス停留所、トンネル等において、当該事故が発生した場合は、車道、路側帯等と重複することがあります。その場合には、該当する両方を○で囲みます。
(ウ)「歩道」は、歩行者の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によって区画された道路の部分とします。
(エ)「路側帯」は、歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた道路標識によって区画された帯状の道路の部分とします。
(オ)「路肩」は、道路の主要部分を保護するため車道、歩道等に接続して設けられた部分であって「路側帯」以外のものとします。
(カ)「交差点」は、2以上の道路(歩道を除く。)の交わる部分(車両停止線のある場合にあっては、車両停止線を対向車線に延長した線によって囲まれた道路の部分)とします。
(キ)「バス停留所」は、乗合バス停留所の前後20mの道路の部分とします。
乗務員
(1)「経験年数」は、当該自動車を運転することができる資格を得たときからの運転経験の期間です。
(2)「本務・臨時の別」は、自動車運送事業者から当該運送事業の用に供する自動車の運転者として選任されている者を「本務」とします。それ以外の者は「臨時」とします。
(3)「乗務開始から事故発生までの乗務時間及び乗務距離」は、当日の最初の乗務から事故発生までの乗務時間及び乗務キロ数のそれぞれの総和です。
乗務が2日以上にわたって継続して行われた場合は、当該乗務の開始から事故発生までの乗務時間及び乗務キロ数とします。この場合、乗務員がその途中で8時間以上事業用自動車を離れた場合は、そこで乗務が終了したものとします。
(4)「交替運転者の配置」は、運転を交替するための者が当該自動車に同乗していると否とにかかわらず、当該運行計画において、運転を交替する者が配置されている場合は「有」とし、それ以外は「無」とします。
交替運転者が運転を交替した後に事故を惹起した場合にあっては、当該交替運転者が運転を交替してから事故発生までの乗務キロ数を記載します。
(5)「過去3年間の事故の状況」及び「過去3年間の道路交通法の違反の状況」は、事業用自動車の乗務時のものを記載します。
再発防止対策
事故の原因が明らかになってから再発防止対策を講ずる場合には、「原因究明結果待ち」を記入し、緊急的に講じた対策についても記入します。
事故報告書の様式
事故報告書の様式は決まっています。運輸局やトラック協会のホームページからダウンロードできます。
関東運輸局 東京運輸支局からダウンロードするなら
(↓)
事故報告書様式(30日以内届出) [PDF] [Excelファイル]
運行管理者、運転者必読!交通事故を起こさないための本
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交通事故の防止は、運転者だけの問題ではありません。
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ドライバーズハンドブック 交通心理学が教える事故を起こさない20の方法
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《交通事故半減のための5つのノウハウ》
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(2) 荷主企業への協力要請
(3) 交通事故削減の仕組みの構築
(4) 人事評価制度の活用
(5) 交通事故削減のための「就業規則」の作成
トラック運輸業界では、ドライバーの長時間労働や過重労働により悲惨な交通事故が多発している現状である。
その一方で、トラック運輸事業者の労働基準関係法などの法令違反率は年々上昇している。
交通事故や荷役事故の発生要因は、長時間労働を筆頭にした法令の不遵守であり、「安全」を軽視した組織風土に根本的な原因がある。
本書は、「年間82件の交通事故を43件に半減した」トラック運輸事業者が実際に実施した、長時間労働の是正、人事評価制度の活用、就業規則の作成などの取組みを解説し、交通事故を削減するための仕組みを明らかにしている。
著者: 山本昌幸
出版社: 労働調査会出版局
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